アダムとイブはへそがあったのか?
聖書によれば、アダムは、神によって創生され、イブは、アダムのアバラ骨から、同じく神が創造されたことになっている。
中世のヨーロッパの画家たちは、アダムとイブを描く場合、へそをどうするかは大問題であったという。神は自分に似せて、「完全なもの」をおつくりになった。ならば、へそのない人間は不完全である。しかし、へそがあるとすれば、それには神の深い英慮があるはずである。神の創ったものに、目的のない無駄なものものなど無いはずだからである。
困った画家たちのなかには、イブの場合は、長い髪で、へそをなんとか誤魔化したものがいた。しかし、アダムはそうは行かない。へそをつけたり、つけなかったりした。
ミケランジェロは、ちゃんとへそを描いたという。彼は、当時の法王と親しかったので、これで一件落着とみんなは考えた。ところが、へそ反対を唱える、大学者トーマス・ブラウンが現れ、混乱は蒸し返された。彼は、「へそみたいな余計なものは、神が、効用の無いものを与えたことになるから誤りである。」と主張した。
また、ある者は、神が余計なものを付け加えたのは、人間の「常識的」という罪に誘惑するための、「神のわな」であると論じた。つまり、神が「人間を引っ掛けようとして、アダムのへそを付け加えた。」と言うのである。これに対して、「神が人間を引っ掛けようとする筈がない。」との反論を生んだ。
しかし、この議論は、決着のないまま、現代にまで続く。
1940年代に、アメリカの下院軍事委員会は、ある本を軍人に配布するのに反対した。
その理由は、その「人種のさまざま」と言う本の挿絵に、「アダムとイブがへそをつけて描いてあるからだ」と。実際は、この本の内容が、当時のアメリカ議会の意図に反し、知性で、白人が黒人に劣るとの調査が掲載されていたため、宗教問題にかこつけて、配布を回避させたのが真相のようだ。
アダムとイブの絵画を見る機会があれば、へそをよく見れば興味がさらに沸くかも。
参考:エヴァンズ「ナンセンスの博物誌」
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